4/1〜4/3の日記

2022-4/1

 ワクチンをぶち込むために乗り込んだ大阪メトロの中、久しぶりに書いている。

前に座っている貴婦人はマスクをしていない。もしも、この人におれが今からワクチンを打ちに行く事を知られたら、携えたワニ革の赤いバッグから拡声器を取り出して、コスモスクエアまで大演説を開催してしまうかもしれない。思想は自由だけど、電車内で演説を開催されたらさすがに他の乗客に迷惑になるので、一応Google

「コロナ 風邪」「ワクチン 毒」「マスク 意味なし」「石田純一 悪くない」

などの検索履歴を残すことで、僕もそっち側の住人ですよ、というさりげないアピールはしてみる。そのアピールが功を奏したのか、何事もなく目的地に到着し、下車しようと立ち上がった瞬間、その貴婦人も立ち上がり、同じ駅に降り立ってしまった。これはもう、完全に仲間と思われている。困った。今更「車内の治安を守るための行動でした」と伝えても、思想の善悪に関わらず妙齢の女性は人の意見に耳を傾けないように出来ているから、有無を言わさずビラを1000部くらい渡されるんだろう。それを全て配り終わったらようやく手持ち看板を持つことが許可され、その姿がSNSに5件以上載せられ、一人前だと判断されたおれは拡声器を使えるようになる。長い道のりだ。おそらく、若手初のそっち界隈の芸人になるだろう。そうなったら演説をしている横でコントとかやらされるんか、良い方向にでは無いが名は売れるかもな、とか考えてたら貴婦人はおれをスルーして駅前のスーパーに消えていった。

 

 

おれは貴婦人の持っていたバッグくらい顔を赤くして病院へと向かった。

 

 

 

2022-4/2

 他の同期が1年振り返っていたりしてるからおれも書いてみようと思って、1時間くらい文章を打ち込んで見返してみると、ディスプレイ上には憎悪や猜疑を煮詰めて更に濾したような文字列が並んでいた。

 

「きっと歪んだ価値観を持つ大人がたくさんいる環境で育ってしまったのね」

「この子がこんな文章を書いてしまうまで何も出来なかったなんて…自分の無力さが情けない」

「そもそも文が下手くそで読みにくい」

 

一通り読み返して、そういった感想を抱いた後、そっと消して、ちょっと泣いた。あんな文章を読んで不幸になるのはおれだけで良い。

 

 NSC、自分以外のメンバーが全員スポーツ推薦組だった大学1年の時の少人数制の授業と全く同じ居心地の悪さが最後まであった。むしろ同期の結束が強まってくる後半になればなるほどそれは濃くなっていってたかも。結局、その授業は日本語もろくに話せないセネガルからの留学生とディスカッションをさせられるのが馬鹿らしくて途中から行かなくなったけど、NSCには日本語が話せない外国人はいなかったからそこだけは良かった。おったら辞めてた。間違いなく。トラウマで。

 

 

2022-4/3

 実家。実家実家。何もしてないのに食事が出てきて、食べ終わった後も何もしてないのに食器類が片付いてて、何もしてないのに一丁前に疲れたふりして風呂に入れてるから紛うことなき実家。実家実家実家。こんなに何もせずにあらゆる物事を享受できるのに、歯磨きだけは自分からやらなあかんの面倒すぎる。ここまで来たなら、もう歯も勝手に磨かれといてくれ。実家実家実家実家。